インタビュー
2023年12月18日

ランドセル工房を発祥とする革製品ブランド「TSUCHIYA KABAN」から、愛犬との時間をより豊かにする5つのペットアイテムが登場しました。

なかでも、ランドセルを背負った犬の姿は、とってもキュート。
大人ランドセルの構造と製作技術を応用して仕立てられており、愛犬の個性をさりげなく、そして上品に引き立てます。

大切な家族と過ごす時間を、より心豊かなものにできたなら───。

そんな想いを込めて、見た目だけでなく使い心地の良さも追及。デザイナーや職人によって考え抜かれた形状や可動部により、愛犬に負担をかけずしっかりと体にフィットします。

土屋鞄が培ってきた、子どもたちの6年間の成長を支えるランドセルづくりの技術。
大人向けの製品を手がける上でも大切にしてきた「丁寧なものづくり」という精神性。

それらすべてを掛け合わせて誕生した「ペットアイテム」には、どのような願いや想いが込められているのでしょうか。

今回は、「土屋鞄が思い描く、犬と人とのより良い関係」をテーマに、デザイナー・丸山さんとアーティスティックディレクター・大野さんにお話を伺いました。

「祝いと願い」が込めたランドセルだからこそ、愛犬に。

────今回インテリア雑貨シリーズ「ホームコレクション」から、ブランド初となる5つのペットアイテムが登場しました。どのような経緯で製作がスタートしたのでしょうか。

大野さん:ワンちゃんは、暮らしの中で喜びを与えてくれる大切な家族の一員ですよね。そんな家族との時間を「より豊かにしてくれる“もの”があったらいいな」という想いが種となり、構想が練られていきました。これまで、ホームコレクションシリーズを通して“人ともの”との関係を育んできた土屋鞄だからこそできる「犬にとっても、人にとっても、より良いものづくり」が実現できたなら。そんな気持ちもありましたね。

 

────とりわけ「犬用のランドセル」は、とってもキャッチーですね。ランドセルづくりから始まった土屋鞄ならではの製品のように感じます。

大野さん:ありがとうございます。お子様がランドセルを購入されるときって、ご家族にとっては一大イベントなんですよね。ご両親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、叔母さんや従兄弟など、親戚一同でいらっしゃったり。その背景には「よく、ここまで大きくなったね」というお祝いの気持ちと、「これから6年間、つつがなく過ごせますように」という願いが込められていると思うんです。

そして「祝いや願い」の気持ちは、ワンちゃんにも当てはまるなと。初めて外の世界を知るお散歩・ドッグランデビューなど、家族として節目を大切にする気持ちは変わらないですよね。高価なものであれば良いというわけではなく、これまでとこれからの健やかな成長を見守る“ランドセル”だからこそ、ペットという大切な存在にふさわしいアイテムだと思います。

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職人の技術の賜物。どんな犬にもフィットするランドセル

───ワンちゃんにとっても、心地の良い作りになっていることが伺えます。製作にあたり、技術やデザインの側面でこだわった点を教えてください。

丸山さん:8kg以下のワンちゃん対象の、いろんな犬種や毛並みにも合わせやすいシンプルなランドセルに仕上がっています。これまで土屋鞄では、子ども用・大人用のランドセルを手がけてきました。ですが「そのままミニチュア化すればいい」という話ではないんですね。ミシンで縫えない部分がでてきてしまったり、もふもふした犬種のワンちゃんにはフィットしても、毛の短いつるんっとしたワンちゃんが背負って走るとズレてきてしまったり。

ランドセルにおいて大事な要素である「箱型」「アーチ形」「丈夫さ」という3つの点を守りながら、どうしたら安心して長く使ってもらえる鞄に仕上がるか。職人の技術と知恵を結集させて作り上げました。

 

───特に難しかったところはありますか。

丸山さん:やはりワンちゃんは言葉でコミュニケーションが取れないので、フィードバックや修正の難易度は上がりますよね。人であれば、使い心地やデザインの要望などを直接聞けますが、ワンちゃんの場合は、よく観察してこちらが多くを汲み取りながら微調整をしていく必要があります。

大野さん:ワンちゃんによっても反応がそれぞれで、それも難しかったですよね。背負った瞬間にピタッと固まっちゃう子もいれば、るんるんと歩く子もいて(笑)。個性や性格によってばらつきがある中で、どんなワンちゃんにも負担なく使ってもらえるよう試行錯誤していきました。

 

丁寧な“もの”を愛犬にプレゼントすることも、愛情表現の一つ

───難しい側面がありつつも、「土屋鞄だからこそ実現できた」部分についてもお聞かせください。

大野さん:土屋鞄は、「時を超えて愛される価値をつくる」という創業時からの変わらない想いがあります。傍にあるだけで人に安らぎを与え、心を幸せな気持ちで満たす。愛おしいものを生み出す。そんなものづくりの根底に流れるのが、「丁寧」という価値観です。

たしかにワンちゃんは言葉は通じないかもしれない、けれど「丁寧に扱ってもらっているな」「大切にしてもらっているな」「愛情を注いでくれているな」という気持ちは通じますよね。そうなったときに、丁寧なものを愛犬にプレゼントすることも、大事な愛情表現になると思うんです。

なのでデザインとしても「奥行きのあるシンプルさ」を追及しました。毎日を重ねる中で、優しい気持ちが育まれる。ほっとする。小さな喜びを感じられる。例えるなら、特別な華やかなパーティーではなく、“毎日食べても飽きないごはん”でしょうか。機能性はもちろん、日々のなかで豊かさを感じられる製品に仕上がったのではないかと感じています。

愛犬との思い出を、ランドセルと一緒に愛でながら

───丁寧に長く使っていただけるよう作られた「犬用ランドセル」。これからどんな方に、どんなシーンで使ってもらいたいですか。

丸山さん:飼い主さんとワンちゃんが一緒に生きていく過程を見守るアイテムとして側に置いてもらえたら嬉しいですね。メイン素材には、多様な毛色に合い、ワンちゃんの成長と共に風合いが増す「ヌメ革」を使用しています。

だんだんと愛犬に馴染んでいくランドセルを見て、「あのとき、こんなことあったな」「こんなに大きくなったんだな」と共に過ごした思い出を愛でてもらえたら、さらに愛着が湧いて楽しく使っていただけるんじゃないかなと思いますね。

大野さん:それに犬用ランドセルは、リードを組み合わせればポシェットにもなるので、飼い主さんも一緒に使うこともできるんです。

大野さん:お子さんとお揃いで背負っても可愛いですし、お父さん、お母さん、お子さん、ワンちゃん。みんなそれぞれの鞄を携えてお散歩をする光景も、とっても素敵だなと思います。

丸山さん:ワンちゃんがランドセルを背負っている姿は街で見かけると本当に可愛いんですよ!

大野さん:そういえば、弊社社員の愛犬がランドセルを背負って散歩をしていたら、近所の方から「あら、可愛いね!」「どこにお勉強いくの?」と、声をかけられたと言っていました(笑)。

大野さん:家族だけでなく、ご近所さんや周囲の人とのつながりも、もたらしてくれる。そんな社会への広がり方が見えたら、こんなにハッピーなことはないなと思いますね。ランドセルを通じて「犬と人とのより良い暮らし」を育めたら嬉しいです。