2020年7月24日
災害が起きたらどうする?ペットの同行避難と同伴避難の違いは?
近年の震災で起きたこと
近年の災害で最大規模だった東日本大震災において、人間だけではなく多くの動物も被災し命が奪われました。
(東日本の)震災により死亡した頭数については、青森県で少なくとも31頭、岩手県で602頭、福島県では約2,500頭との報告がある他は、不明とされています。
<環境省・東日本大震災における被災動物対応記録集(平成25年6月)より引用>
そして命は助かったものの怪我をしたり、自宅に留置されたことで飼い主さんと離れ離れになり放浪犬となってしまったり、亡くなってしまった犬も多数いたようです。一方で直接的な被害を受けなかったものの飼い主さんが被災し飼えなくなったため自治体に一時預かりや引き取りをお願いするケースも多くありました。
<環境省・東日本大震災における被災動物対応記録集(平成25年6月)より引用>
災害のあった地域の自治体や獣医師会、動物愛護団体が連携したくさんのペットの保護、そして飼い主さんの元へそのペット達を返す活動をされました。しかしそのペット達に鑑札や迷子札、マイクロチップが装着されていなかったために飼い主さんの特定が難しいケースが多くみられたようです。また、保護された犬の中でもともと屋外飼育されていた犬は番犬として飼っていたこともあり鳴き声がネックのため預かり先を見つけるのが大変だったという状況もありました。そして避難所でペットの受け入れがなされていない課題もありましたが、それ以上に受け入れ体制があったにも関わらず飼い主さんが同行避難について知らなかったため被災者がペットを同行しなかった状況も課題になりました。
もしも災害が起きた時、ペット防災の原則となる「同行避難」について考えてみましょう。
同行避難と同伴避難の違い
同行避難と同伴避難は似ていますが、異なった意味です。
まず、同行避難の意味について理解しましょう。同行避難とは、
災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難所まで安全に避難すること
<東京都福祉保健局より引用>
つまり同行避難とはいっても、避難所で飼い主さんと同じ空間で居住する同伴避難を意味する言葉ではありません。
アイペット損害保険の調査では、災害が起きたときに飼い主とペットが同行し安全な避難所まで避難することを「同行避難」であると答えられた飼い主は61.6%で、18.9%が「同伴避難」、19.5%が「わからない」と回答したことが分かりました。
調査はインターネットによるアンケートで、全国の犬猫の飼い主2214人(犬:1212人、猫:743人、犬猫:259人)を対象に、2017月1月24日から26日の期間で行われました。
避難所でのルールはそれぞれの避難所を管理する自治体に従いましょう。この同行避難は飼い主さんの責任が全ての要となってきます。
【POINT】同行避難と同伴避難の違い
- 同行避難:避難する行為(避難行動)
- 同伴避難:避難所でペットを飼養管理すること(状態)
避難所でのトラブル
避難所は県や群単位ではなく市町村ごとに管理されます。東日本大震災ではペット対応に関する取り決めがそもそもなかった地区がほとんどで対応が遅れたり、避難所で拒否されたために車の中や屋外でペットのお世話をする状況もあったようです。その場合、衛生面や騒音の問題が発生する可能性があり、飼い主さんや愛犬自身への負担も少なくありません。
また、ペット受け入れがあった避難所でも様々な課題が見受けられました。集団生活に必要なしつけがされていなかったため起きる周囲の方とのトラブルもや、アレルギーや匂いなど衛生面に関するトラブルも多くあったそうです。そして仮設住宅においてはペット可の住宅では室内飼いが原則でありながら屋外飼いや放し飼いをしてしまいトラブルになってしまったケースの報告もあったようです。
<環境省・東日本大震災における被災動物対応記録集(平成25年6月)より引用>
こういった課題に対して、自治体は避難所でのペット受け入れ体制に関するルールを整えたり、避難所内ではペットと人間を分けた避難空間を作るなどの体制を整える必要があります。そして飼い主さんとしては、平常時に基本的な責任を徹底する事で災害への備えをすることができます。次の2記事では普段どのような備えをするべきか、そして実際に災害が起きた場合なにを想定するべきか、考えてみましょう。
同行避難における注意点
同行避難とは第一回の記事でも述べたように、災害時において飼い主さんが愛犬と一緒に避難することです。避難先で一緒にいることは含みません。
そしてどんな状況でも必ず同行避難をしなければならないというものではなく、下記が保証されている場合は避難所につれていかないというのも選択肢の一つという考えがあります:
- 自宅が安全
- 定期的に世話をするために自宅に戻れる
- 毎日の食事と健康状態の確認が可能
この同行避難ができるのか、それを要に普段から愛犬との暮らしを考える事が大切です。一人が持ち運べるのは6〜8kg程度だそうです。一緒に連れて行ける適正な頭数をご家庭ごとに考える事が重要です。そしてシニア犬や病気を抱えたわんちゃんと暮らしている、または飼い主さん自身がわんちゃんを連れての避難が困難など、それぞれのご家庭で一緒に避難する際の移動手段を日頃から考える必要があります。もしも同行避難が難しい場合は移動を手伝ってくれる人を探しておくといざという時に安心です。
避難所でのトラブルを回避するための配慮
避難所ではたくさんの被災者の方が集まります。その中には動物が苦手な方やアレルギーをもった方がいる可能性があります。そんな方や飼い主さん、そして愛犬への精神的負担にならないよう飼い主さん自身が責任を持って周りへの配慮をすることが重要です。第2回目の記事で紹介したような平常時からできることを徹底し、集団生活ができる体制を飼い主さん自身が責任を持って整えておきましょう。
熊本地震で設置されたペットと避難できるバルーンシェルター
犬も災害による精神的ショックを受けます。そのため普段吠えないようなわんちゃんでも興奮しやすくなるなど、普段見受けられない行動を愛犬がとってしまうこともあります。愛犬の様子がいつもと違っても、叱ったり動揺したりしないで落ち着いてケアできるように、その「もしも」を普段から想定しておくことがとても大切です。飼い主さん自身がいざという時にどのように愛犬の安全確保をしたらいいか、考え備えておく義務があります。なにか特別な訓練や準備をしなければならないということではなく、愛犬の基本的なしつけと健康管理、そして様々な環境に慣らしておく社会性を育むことがペット防災の基本です。