健康・美容
2022年7月6日
嘔吐は非特異的な臨床症状であり、様々な疾患でみられる症状です。本記事では、犬の嘔吐の原因と対策についてまとめています。
  • 本記事は獣医師を中心とした株式会社DogHuggyのTrust&Safetyチームによって作成された記事です。
〜もし、今まさに愛犬が嘔吐をしていて本記事を読もうとしている方がいたら〜
明らかに元気がない、吐物に血液が混じっている、祈るような姿勢(前肢を伸ばして腰を上げる姿勢)をしている、何度も繰り返し吐いている、異物誤食の可能性がある、等の場合には、まずはすぐにかかりつけの動物病院に電話をして指示を仰いでください。1分1秒が命取りになる可能性があります。

嘔吐とは?

「嘔吐をしている!」と動物病院に来院した患者さんの症状が、実は嘔吐ではなかったということもしばしばあります。ここでは、嘔吐の特徴と、特に嘔吐と間違えられやすい症状である“吐出(としゅつ)”の特徴を簡単に説明します。

嘔吐の主な特徴

  • 食後数分〜数時間後に吐く
  • 吐物は未消化物や部分的〜完全な消化物、胃液が混じるためpHは酸性、黄色(胆汁色)のこともある
  • 流涎(よだれを流すこと)や口唇を舐めるなどの前駆症状がみられる
  • 腹部の動きがみられる
  • 様々な疾患に起因する

吐出の主な特徴

  • 食後すぐ〜数分後に吐く
  • 吐物は未消化物、pH中性、粘液が混じる
  • 嘔吐でみられる前駆症状や腹部の動きがみられない
  • 食道疾患に起因することが多い

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嘔吐の原因と対策

冒頭で述べた通り、嘔吐は非特異的な臨床症状で、下記に挙げるような様々な疾患に起因して起こります。

  • 代謝性・内分泌疾患
  • 消化器疾患
  • 中毒
  • 薬剤
  • 食事性

また、一言で“代謝性・内分泌疾患”といっても、尿毒症、糖尿病、アジソン病、、、などと原因は様々です。そのため、飼い主さんが嘔吐の原因を特定することは難しく、また、自己判断で様子をみることは非常に危険です。

ですが、嘔吐に必ずしも疾患が隠れているというわけではありません。飼い主さん自身で対策できる嘔吐の原因と対策についてまとめます。

車酔い

犬も人間と同じで車酔いをします。車の揺れや車内の環境、不安などが原因となり、パンティング(浅く速い呼吸)、流涎、嘔吐といった症状がみられます。

【車酔いの対策】

  • 出発の2~3時間前を目安に食事を済ませておく
  • ケージやクレートを使用し揺れを軽減する
  • 空調管理やにおいの対策を徹底する
  • 車を止めて外で休憩する時間を適宜設ける
  • 事前に酔い止め薬を処方してもらっておく

空腹による嘔吐

空腹が原因で白または黄色の泡や液体を吐くことがあり、多くの場合には早朝(朝食前)に起こります。これは、胃液や十二指腸液(黄色の胆汁を含む)の逆流によって起こると考えられています。

【空腹による嘔吐の対策】

  • 空腹時間を短くする(例. 早朝に起こる場合には、就寝前に少量のフードを与える)

その他

車酔いや空腹の他にも、食べすぎや初めてあげたフードによるアレルギーが原因で嘔吐することもあります。1回のみの嘔吐であり、嘔吐の他に症状がなくいつもと変わらない様子であれば、しばらく様子をみても問題ないでしょう。ただし、嘔吐が続く場合には他の疾患が隠れている場合もあります。早めに動物病院に相談をしましょう。

【アレルギーによる嘔吐が疑われる場合の対策】

  • 原因と考えられるフード(おやつも含む)は与えない
  • 原因と考えられるフードの原材料を記録しておく(他のフードで同様の症状が出た際に原因物質の特定に役立ちます)
  • 動物病院でアレルギー検査を行う

嘔吐で動物病院に行く場合には

前章で述べた通り、一部を除いて飼い主さん自身で嘔吐の原因を特定することは難しく、多くは動物病院に来院することになるでしょう。嘔吐は様々な疾患に起因するため、獣医師は飼い主さんからの情報をもとに診断あるいは診断に必要な検査の判断をします。ここでは、“嘔吐”という主訴で動物病院に来院する際に飼い主さんに記録しておいてほしい情報についてまとめます。

  • 嘔吐はいつから・どれくらいの頻度で起こっているか?
  • 直前の食事は、いつ・何を食べたか?
  • 吐物はどんなもの?(内容物、色、におい、血液混入の有無など)
  • 食欲はあるか?飲水はできるか?
  • 嘔吐の他に症状はあるか?
  • フードの他に何か口にしたものはあるか?(異物や中毒の可能性)
  • ワクチンは接種しているか?(パルボウイルス感染の可能性)
  • 病歴や投薬歴はあるか?

動物は言葉を発することができないので、正確な診断・治療のためには飼い主さんからの情報が非常に重要です。飼い主さんは慌てずに行動するよう心がけましょう。